可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「なにその疑うような目。さすがにあたしだってゲスやる相手くらい選ぶっての」
「べつに疑ってるとか、そういうわけじゃねえけど----------」
「じゃあ何?」
あたしが詰め寄っても、渚は一段上から見下ろすような顔してやれやれと首を振るばかり。
「………素で鈍いのかすっとぼけてんのか、わかんねぇヤツ」
あたしが聞き取れないくらいの声で、なにかを呟いた。
「言いたいことあるならはっきり言ってくれない?だいたいさ、渚だけじゃん。あたしの馬鹿に付き合えるような馬鹿は。それわかってて他のヤツかまったりしないっての」
渚のよくわからない態度に軽くムカつきながら言った言葉は、べつに渚を喜ばす意図はなかったわけだけど。
『特別扱い』が大好きな王様は、『渚だけ』ってあたしの言葉にちょっと気を良くしたように目を細めた。
正直、こんなうれしそうな顔されるのはなんか癪だ。
「言っとくけど、七瀬がこんなとこ来るようになったの、全部渚の所為なんだからね」
「は?どういう意味だよ、それ」
「渚、ラブラブ週間はずっと休み時間教室いなかったでしょ。佐々木、渚がいないときすげーよ?最近七瀬がモテるからめちゃくちゃ僻みまくって、七瀬につっかかりまくり。男の嫉妬全開状態」
「………よく知ってんだな」
「席、七瀬と隣だし。佐々木、わざわざ七瀬の席のとこまで来て絡んでくの。あいつ、見てるだけでもほんとうぜぇ。渚も七瀬が大事なおトモダチなら、どうにかしてあげたら?七瀬も佐々木避けのためにここに来てるんだと思うけど」
「………おまえそんなに由太が心配なのかよ」
そう言ったきり、渚はちょっと拗ねたように黙り込む。
そうしてる間にも、授業の終わりを告げるチャイムが鳴った。