可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「おまえいつも制服だし、ちょうどいいじゃん?どうせガリ勉ばっかでろくな私服持ってねぇんだろ」
「いや、あるし。っていうかちょっと待ってよ。……だからあたし、HRデー、行かねぇつってんのに」
「行き先練ったから。俺のプランニング楽しみにしとけ。敵前逃亡とかつまんねぇことすんなよ」
そういって渚はにやっと笑う。
イケメンな顔でそうやって無防備な感じに笑われると、その幼い表情が無駄に目に眩しい。
なんだか今日の渚、まるで彼女を喜ばすためにデート前日にはりきってる男みたい。我ながらひどい例えだけど。
「話聞いてる?っていうか渚班長だったの?てっきり七瀬にでも押し付けたかと思った」
「………班員なんだからそれくらい把握しとけよ。おまえどんだけ興味ねぇんだよ」
すこしだけいじけたような顔する王様が愉快で、すこし気分がよくなる。
「つぅわけだから。ともかくとっとと行くぞ」
どうやらほんとに王様は本気っぽい。
不本意だけど、渚が動くと勢いに引き摺られてしまう。
「………早退届どうすんの」
「おまえ俺の分も出しとけよ。先行ってるから現地集合な」
「いいよ。その代わり一つ条件ね」
べつに渚に付き合ってあげてもいいけど。一方的に振り回されて言いなりになるような感じは面白くないから。
「今すげーゲスなシチュエーション思いついたから。あたしがやれって言ったタイミングで、渚、必ずあたしにキスしてこられる?」
挑発するように言ってやる。
あたしが自分で「ゲスい」といったときは、ほんとにすごい下品でどうしようもないシチュを考えてるときだって
わかってるはずなのに。
渚は歓迎するようににやっと笑った。
「いいんじゃね?そういうの待ってたし」
あたしに悪友みたいな笑みを見せてくる。
馬鹿なヤツ。
悪ノリもゲスいキスも、本命のリア先輩とやった方がもっとたのしいだろうに。
そう思いつつも、あたしは頭の中で早退の理由は何にしようかなんて考えはじめていた。