可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「ご試着も出来ますよ。見た感じと着た感じでまた印象変わりますから。是非どうぞ」
あたしが仏頂面のままでいると、姫系店員はやっぱり渚を熱っぽい目で見つめたまま言う。
「だってさ。行って来いよ」
「……今のあたしの言葉、聞こえてた?渚、俺が選んでやるとか豪語してたくせに、見立て最悪じゃん?」
「聞こえてるわ。とりあえずそこまでおまえにごちゃごちゃ言われなきゃなんねぇくらい俺の趣味が悪いかどうか、着て見せてみろよ。素材が悪いのか服が悪いのか判断してやるから」
喧嘩売るように渚が言ってくる。
そうやって煽ってあたしを動かそうとしてることなんて、こっちはお見通し。
けどあたしにこのピュア系ブリブリワンピが似合わないこと証明してやって、渚に「俺が間違ってました」と認めさせるのもいいかもしれない。
「……わかった。あの。これ試着お願いします」
あたしがそういうと、店員はちょっと驚いた顔をしつつも試着室に案内してくれる。
「ね、渚」
あたしの後ろをついてくる渚を引き寄せて、耳打ちする。
「あたしが試着室入ったら、カーテン中に顔だけ突っ込め」
あたしの言葉の意図を正しく理解したのか、渚の顔が一瞬強張る。
あたしは渚が思うよりずっと性質の悪い女だから。
渚がどこまでこのくだらないチキンレースに付き合おうとするのか試したくなる。
でも怖いなら逃げていい。
そういう意味を込めて笑ってやると、渚はくしゃっと顔を歪めて言った。
「……ゲス。やっぱおまえ変態だな」
笑いながら、しょうがないなっていうようにあたしの頭を小突いてくる。
ここでよくわからないのは、なんで渚はこういう無茶振られた場面で、こんなうれしそうな顔出来るのかってこと。
リア先輩に向けてるときのやさしい表情と、正直見分けがつかない。
「………渚ほうがよっぽどゲスだっつの」
思わず小声で呟いていた。