カモフラージュ~幼なじみ上司の不測の恋情~
逸希は強い力で私の肩を掴んで、桜の幹にカラダを押し付けた。


「痛い…逸希・・・」


「何で…気づかないんだ?俺は…ずっと・・・」


昔は私よりも背が小さかった逸希。


なのに今は彼の方が背も高くて力だって強い。


逸希の色素の薄い瞳が切なげな光を放つ。

その瞳に思わず息を飲んでしまった。ドクンと大きく跳ねる鼓動の音。

心臓は次第に早鐘のように高鳴った。



「いつもいつも…お前は友達の仲立ちばかりする。莉那お前にとって俺は幼なじみ以外の何者でもないんだな」


「逸希・・・」


逸希は力任せに学ランの第二ボタンを引き千切り、私に渡した。


「俺はアメリカに行く。いい機会だ…お前との幼なじみの関係は解消だ。街で会っても…無視しろっ!」


「逸…希!?」

「じゃあな・・・」


逸希と私はその卒業式を境に『幼なじみ』ではなくなった。


< 4 / 335 >

この作品をシェア

pagetop