カモフラージュ~幼なじみ上司の不測の恋情~
「社内で噂になりかけていたから…莉那にカモフラージュとして君を使うように指示したのは俺だ。新規事業部ももうすぐ、始動する。またとない出世のチャンスを棒には振れない。遊佐課長君だってそうだろ?君は新規事業の為に藤堂社長にヘッドハンティングされた身だ。俺達以上に大きな期待を寄せられているはず。君はあくまで俺と莉那の仲を隠すカモフラージュだ。莉那は君に渡さない・・・」


「止めて下さい。沢木部長」


莉那が沢木部長の言葉の応酬を遮った。


秘密恋愛か…
確かに不倫は人には言えない道ならぬ恋。


「俺はここで失礼します…」


「遊佐課長君は本当に気転の利く部下だな。俺の指示通りに動いてくれれば、それなりのフォローはするよ」


「別に貴方の力を借りなくても、俺は一人で大丈夫です」


「大した自信だな…」


「失礼します…」


俺は軽く頭を下げて二人とは反対方向に歩き出す。


ふと立ち止って振り返り、二人の後姿を見送る。


莉那の彼氏が妻子持ちだと最初から知っていたら、絶対に別れさせたのに。


激しい後悔の念が心の中に溢れた。


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