君と2回目の恋を
無心で歩いていた



そうしたらいつの間にか夢華の家の近くに来ていた


自嘲気味に笑う


あいつが居なくなってからも、何度も何度も訪れた



もしかしたらと何度もインターフォンを押した


今日は何事もなかった顔をしてひょっこり顔を出すんじゃないか



そんな淡い期待を毎回抱いた




だけど今日まであいつは出てこなかった



いつも帰ってくるのは静寂だった





温かい思い出と、辛い記憶を呼び起こす場所


誰も居ないはずなのに
2年経った今も少したりとも変わらない




変わったのはずっと灯りがつかないこと





「どこ、行ったんだよ」



誰に尋ねるでもなく呟く


呟いたつもりだったけど、音にならずかすれた音が出ただけだった



かすれた音は雨音にとけて地に落ちて、濡れたアスファルトに吸い込まれた








玄関の階段に座り込んで手のひらを見つめる




俺は何を守っていたのだろうか

俺は何かを守れているのだろうか





大事なものを失って

総長としても中途半端で





本当に俺はどしうしようもないやつだ





「なぁ、どうしたらいい?」






1度だけ夢華にそう聞いたことがある




そうしたらあいつはどんな声でなんて言ったんだっけ






「そう言う時はね、……」





思考が霞がかった様にぼんやりする




だんだんあいつの記憶がおぼろげになっていく





忘れたくない





そんなことを思っているといつの間にか意識を手放した





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