君と2回目の恋を
「夢華ぁ、どうしたの?

何かあったの?」




その時、聞き覚えのある声が夢華の後ろから響いた



声の主を見た途端、周囲の音がかえってきた




随分と動揺していたようだ




声の主、夢華の母親は俺を認めるとはっとした顔で



唇だけで俺の名前を紡いだ




そして夢華に歩み寄って


「夢華、ベタベタじゃない。早く家に入ってお風呂で温まりなさい」

そう言った



俺に目配せしながら





「ま、ママ?この人ほっといていいの?
うちの前で寝てたんだよ?

……それに!」



「いいから、わかったから。後はママに任せなさい」



言葉を遮られた夢華は渋々家の中に入っていく





俺とすれ違う時には、困惑の目を向けていた




どきんと


心臓が震える





頭に疑問符が浮かんでは消える


疑問は次から次へと湧いて出てくる




今までどこにいた?


何してた?


どうして居なくなった?






…どうして夢華は俺を覚えていないんだ?





「蓮斗くん」


疑問の海に呑まれかけていた俺は、その声で現実に引き戻された



「優さん、一体なにが」

夢華の母親に尋ねる




だけど優さんはただ静かに首を振る



「話すと長くなるわ。
また夢華がいないときに今度いらっしゃい」



なんで?と聞こうとしたのが分かっていたように優さんは困った様に笑う




「じゃあひとつだけね」



そっと人差し指をたてる優さんを見て俺の胸は焦燥で満ちる






あの日。夢華が消えたときと同じような


だけどそれよりもっと嫌な感じだ




「実はあの子ね。私たちが居なくなった頃より前の記憶がないの」







「なん……」



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