これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 ――ドンッ!

「きゃっ、すみませ……あなた」

 悲しそうな顔から驚きの顔に変わる。

 しかし驚いたのは俺も同じだ。

 この子、あれから今までずっとここにいたんだ……。猫と一緒に。 

 日はとっくに落ちている。十四時頃からだから……五時間以上は経っている。

 とりあえずぶつかってきた彼女を受け止めた。

 すると後ろからついて来ていた猫が、嬉しそうに俺たちふたりの足元にすり寄ってきた。

 彼女を受け止めたまま、ふたりで足元の猫を見る。

 うれしそうに目を細めて、顔を摺り寄せてくる姿は可愛い。

 しかし抱き留めている彼女へと意識が向きあまりにも近い距離を、まずはどうにかしようと、女と距離をとった。

 「で、今度は何に困っているのですか?」

 少しため息交じりに尋ねてみた。

 どうせ乗りかかった船だ。もう少しくらい乗っていてもかまわないだろう。

「それが……、この子がずっとついて来てて」

 俺を見上げるその瞳はこまりはてていると訴えかけてきた。

「私、この子連れて帰れないんです」

 はぁ……、参ったな。
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