これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「くそっ!……二宮さんどうかしましたか!?」

 できるかぎり大きな声で話しかけることしかできない。

 相手の男はこちらを見て、しきりに彼女に何かを話かけていた。

 すると、二宮さんは男の背中を押すようにして相手を追い払ってしまう。

「もう、大丈夫ですからー!」

 車をはさんで彼女は俺に話しかけてきた。

 俺はやっと車の間を抜けて彼女の元へと辿りついた。

「……はぁ、はぁ。一体どういうことですか?」

 全速力で走って息が切れる。最近間違いなく運動不足だ。

「すみません。なんだか変なところをみられてしまいました」

「あなたが謝ることではありません。大丈夫ですか?」

 見たところ怪我などはしていないようだ。

 彼女は雨で濡れている俺が、これ以上濡れないように自分の傘へといれる。

「はい。平気です」

 明らかに作り笑いだとわかる笑顔を浮かべている。目にはうっすらと涙の膜が張っていた。

「平気じゃないだろ、そんな顔して。何があったんだ?」

 焦って話かたが変わった。それくらい俺は同様していた。

 去っていく相手は、何度も彼女を見ていた。もしかしたらまた彼女の前に現れるのかもしれない。

「ほ、本当に……何も」

 首を左右にふって否定するが震える声が彼女の言葉が嘘だと言っている。

 そんな彼女をみると途端にせつなくなる。

 心臓がギュッと音を立てた気がした。
< 101 / 228 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop