これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
捕まえたタクシーに彼女を乗せて、俺も一緒に乗り込んだ。

「……あの、まだお仕事の途中だったのではないですか?」

「あぁ」

スマホがさっきから何度も震えている。相手は宗治だ。

就業時間は過ぎている。だから職場放棄というわけではない。ただいつまでたっても戻らない俺を不思議に思って電話してきているのだろう。

「ちょっと電話させて」

宗治に今日は会社に戻らないという連絡を入れる。それだけで何か察したのか意味ありげな笑いが電話口から聞こえてきて頭が痛い。

勘の鋭い奴……。

そのあと、車止めに止めてある車を社内の運転手に連絡をして移動させてもらった。

とりあえず、今日はこれだけしておけば大丈夫だ。

電話を終え、彼女の方を見る。

いつもなら何かしら話しかけてくるのに、今日はその心の余裕もないようだった。

横顔がこわばっている。あまり見たことのない彼女の固い表情。

それが、先ほどの男がもたらしたものだと思うとやりきれない。

「あの男は誰なのですか?何があったのか話せませんか?」

俺は改めて彼女に尋ねた。どうにかして彼女の苦しみを取り除けたら……そんな気持ちだった。
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