これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「さぁ、これで自由ですよ」

これで、いなくなった彼女と俺を探すやつはいない。

「私とふたりでは、不服ですか?」

それまでキョトンとしていた彼女の顔がとたんに、あふれんばかりの笑みを浮かべた。

「とんでもありません!……いいんですか?」

「誘ったのも、無理やり船から降ろしたのも私です。さぁどこから行きましょうか?」

「じゃあ、さっき言っていた屋台に行きたいです」

無邪気な彼女が俺を自然に笑顔にする。

まるで駆け出してしまいそうな彼女の手をそっと握った。

一瞬ビクッとしたけれど、みるみる赤くなった顔を恥ずかしそうに俺から隠した。

振りほどかれないということは、このままでもいいということ。

俺は都合のいいように解釈をして、彼女の手を握り締めて歩き出した。

「決して離さないでくださいね。迷子になっては困ります」

俺の言葉に彼女は真っ赤になったまま頷いた。
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