これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「ほら、ポイと器をもっと近づけないと……」

「あっ!破れちゃいました……」

「だから言ったのに」

落ち込んだ表情の彼女。

彼女にそんな顔をさせたのは、鮮やかな赤色がまぶしい金魚たちだ。

俺は新しいポイを彼女に握らせて、もう一度解説をする。

「ポイをそっと金魚のしたに平行に持って行ってから、ゆっくりとすくうのです」

「ゆっくりと……ですね」

赤い出目金が彼女のポイの上を通過しようとしたときにすくいあげた。

「やった!」

目を輝かせて喜ぶ姿は、隣の小学生の女の子に引けを取らないほど純粋だ。

「すごいです。初めて取れました!」

振り回したせいでポイに穴があいてしまったが、彼女は気にもしていない。

「よかったね、お嬢さん。さぁこの袋に入れて」

屋台の店主が金魚を入れる袋を差し出した。

「ありがとうございます。でも結構です」

「どうしてですか?」

意外な答えに店主ではなく俺が尋ねる。
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