これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「しかし家庭としては褒められたものではなかったですね。参観日には両親は来ませんし、三者面談もできずに先生が自宅に尋ねてきたこともありました。しかしそれでもふたりの両親は私にとって誇れる存在でした」

「そうですか……」

「ただ、私にとって弁護士として生きていくことは難しいのかなと……自分の中の正義と依頼人の利益に上手く折り合いをつけることができそうになかったのです。それで弁護士にならないと両親に告げると、見事に勘当されました」

「えっ……勘当ってそんな」

なぜか彼女は自分のことのように悲しそうに俺を見た。

「そんな顔しないでください。両親は弁護士の息子以外は認めたくなかったのでしょう」

実際にそうだ。父親にいたっては、弁護士バッジのない俺は何の価値もないとも言い切った。

「それで唯一弁護士にならないことを反対しなかった、宗治の誘いにのって彼と一緒に仕事をすることを選んだのです」

今から考えてみれば都合のいいのが近くにいただけかもしれない。

それでも俺の決めたことを反対しなかった唯一の人間だ。あのときの宗治に救われたのは確かだ。
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