これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 そんな形で猫を彼女にお願いして出発した出張が無事に終わる。予定通りの新幹線で俺は宗治とともに移動していた。

出張中彼女から送られてきたメールには、猫と彼女が仲良く写っている画像が添付されていた。無邪気な笑顔を見ていると隣から宗治の視線が突き刺さる。

「お前気持ち悪い」

「どういう意味でしょうか?」

 いきなり部下を捕まえて気持ち悪いとはどういうことだ。俺は不機嫌な様子も隠さずに宗治に問う。

「さっきからスマホの画面眺めてニヤニヤしてんの、自覚ないわけ?」

「はぁ? 別にニヤついてなんて……」

 ないこともないか。宗治のいう通りなのかもしれない。

 次の言葉が続かない俺を面白いものでも見る様に嫌味な笑みを浮かべている。

「なんだ、まだ言いたいことが……あっ、ちょっと悪い」

 手の中にあるスマホが震え始める。画面に表示された名前は“二宮恵”だった。

 急いでデッキ部分に移動して、通話ボタンを押し応答する。

「もしもし、どうしましたか?」

『あの……クロが……どうしよう』

 声の様子から、彼女が動転しているのがわかった。

「少し落ち着いてください。わかるようにゆっくりと話をして」
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