これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「行き場所がないほど、悲しいことはないからね」

切ない表情を浮かべて子猫に向かってそう告げると、頬に落ちた涙をぬぐった。

「ありがとうございます。本当に。あなたに出会えて、私も猫ちゃんも良かったです」

その顔は満面の笑みだ。

コロコロ表情が変わるな。でもそれがきっと彼女の魅力なんだろうな。

「ありがとうございました!」

俺に深々と頭を下げた彼女は、腰までの長いサラサラの黒髪をなびかせながらそのまま駅の方へ走り去ってしまった。

なんだかつかみどころのない人だったな。

「さぁ、行くか」

「ミャー」

俺の声に返事が返ってきた。

確か帰り道に小さなペットショップがあったはずだ。そこで当面必要なものを買おう。

俺は突然の同居人を胸に抱えて歩きながら、なぜか去り際の彼女の笑顔を思い出していた。

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