これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
『すみません。今お時間大丈夫ですか』

 俺の言葉に我に返ったのか少し落ち着いたようだ。

「大丈夫です。何かあったのですね。話をしてください」

『あの……今日お戻りになる高浜さんをびっくりさせようと思って、ご自宅にお邪魔したんです。でも玄関の扉を開けたとたんクロが飛び出してしまって……』

 確かに今までも何度か同じようなことがあった。しかし、すぐに戻ってきて大事にはいたらなかった。

『必死で追いかけたんですけど、どうも高浜さんを探してマンションから出ていってしまったみたいなんです。私も一生懸命探したんですが見つからなくて』

「状況はわかりました。もうすぐ新幹線が到着します。そのまま帰るので私の部屋で待っていて下さい」

 時間はすでに七時を過ぎている。日も落ちて暗くなっている。彼女ひとりで探しにいって危険な目にあったらそっちの方が困る。

『わかりました。あの……クロ大丈夫ですよね?』

 不安でたまらない様子が伝わってくる。

「大丈夫ですよ。ああ見えて元野良猫ですから。あまり心配しないで」

 そう告げると電話を切った。
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