これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 宗治には直帰の許可をもらい、駅からタクシーを拾い行き先を告げると走り出した。
 
 窓の外を眺めていると、窓ガラスに雨粒が付いた。

「とうとう降り始めましたね」

 タクシーの運転手が一言そう言うと、すぐに本降りになり始めた。


 
 マンションに到着して濡れないようにエントランスへ向かう。

 その時背後から声が掛けられた。

「高浜さん!」

 振り向くとそこには、濡れた二宮さんが立っていた。胸には大事そうに猫を抱えて。

「あなた何をやってるんですか! びしょ濡れですよ?」

「クロ見つけました。かわいそうに濡れてしまって」

 それをあなたが言うのか? 俺にはどちらも同じぐらい濡れているように感じるが。

「私が部屋で待っていなさいと言ったのに、あなたまで濡れてしまってどうするつもりですか?」

「すみません。つい夢中になってしまって」

「話は後です。部屋に入ってシャワーを浴びないと……」

 風邪をひいてしまう……と言おうとした瞬間。

「……クシュン!」

 彼女が大きなくしゃみをした。

「とにかく早く部屋へ行きましょう」

俺は濡れたひとりと一匹を連れて、部屋へと急いだのだった。
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