これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
バスルームからはシャワーの音が聞こえてくる。

部屋へ到着してすぐに、二宮さんにシャワーを勧めた。

彼女は申し訳なさそうに、濡れた猫と一緒にバスルームへ行きシャワーを浴びている。

「本当に、無鉄砲だな」

 彼女の思いついたら後先考えない性格は、出会いの場面からすでに何度も経験している。

しかし今回のようなことがたびたびあったのでは、俺の心配の種がなくならないではないか。

 彼女にとっては余計なお世話なのかもしれないが、心配なものは心配なのだ。どうしようもない。

 コーヒーを淹れながらため息をついていると、バスルームからクロが飛び出してきた。それに続き彼女も出てくる。

「コーヒー淹れましたから……」

手もとから顔をあげる。俺の視界にはお風呂に入って少し頬が赤くなった彼女がいた。

 それを見た俺は、思わず視線をそらしてしまう。

 雨に濡れた彼女の服をそのまま身に着けさせるわけにもいかず、俺のシャツとハーフパンツを渡していた。

 別に狙っていたわけじゃない……。決してそうじゃないけど。直視できない状況になるとは完全な誤算だった。

 長い袖は何重にか折り返されても指先がでるのがやっとの状況で、肩のサイズもあわずに完全に“着られている”状況だ。下にいたってはハーフパンツのはずだがふくらはぎのあたりまでの長さがあった。

 洗いざらしの髪を無造作にまとめてアップにしている感じも相まって、無造作で無防備なことこの上ない。
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