これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「あのご迷惑をかけた上にシャワーまでお借りしてしまってすみません」

 申し訳なさそうに眉を下げる。

「かまいませんよ。あなたの迷惑は今に始まったことではありませんから」

 自分の心の中に渦巻くある種の熱を隠すために、わざとぞんざいな言い方をした。

「そうですね……本当にいつもすみません」

 シュンとした顔で反省する様子を見て慌ててフォローする。

「あなたにかけられる迷惑は、嫌いではないです。非日常をいつも味わわせてくれますからね」

「それは褒めてくれていますか?」

 嬉しそうな表情に変わる。

「さぁ? どうでしょうか。とにかく今はコーヒーを飲んで体をあたためてください」

 リビングのローテーブルの上にコーヒーを置く。

 彼女と一緒にバスルームから出てきたはずの、脱走犯はすでにソファの隅のいつもの場所を陣取って眠っていた。

「走り回って疲れたんですね」

「それはあなたも同じでしょう?」

 先ほど玄関で見た彼女の靴は雨でびしょびしょだった。ところどころ泥汚れもありきっとあの公園まで探しに行ったのだろう。
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