これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 そこからマグカップを取りだす。冷蔵庫を開けてミネラルウォーターをそこへ注いだ。

 それをもって寝室に戻る。俺の入った音に気が付いた彼女が顔をこちらに向けた。

 歯ががたがたと震えている。まだ熱が上がりそうだな。

「起こすぞ」

 彼女の背中に手を差し入れてゆっくりと起こし、マグカップを握らせると薬を飲ませた。

「はぁ……ありがとうございます」

「礼なんていいからゆっくり休むんだ。あ……着替えないとな」

 彼女は仕事帰りの服装のままだ。それではゆっくりと休むことができないだろう。

「着替えはどこに?」

 彼女は一瞬とまどったようだ。あたりまえか。男にクローゼットや引き出しの中をみられるのはいい気分じゃないだろう。

 しかしこの状況では仕方ないと判断したのか、ゆっくりと指さした。

「開けるぞ」

 壁一面のクローゼットはかなりの要領がある。しかしそこの三分の一だけが埋まっておりその一角に透明のプラスチックのカラーボックスがあった。そこにパジャマが見えたのでそれを彼女に手渡した。

「じゃあ、俺出てるから」

 部屋の外へでるとリビングへと移動した。もう一度踏み込むとなんだか寂しさまで感じる簡素さで、彼女の部屋という感覚があまりしない。

 なんだか変だな。でもさっきのクローゼットにあったバッグや洋服はかなり高級なブランドものも数点あったような気がする。
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