これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 でも俺が今まで経験してきたどのキスよりも、心の中を満たしてくれた。

 自分に足りなかったものが、なみなみと注がれる感覚が体にみなぎる。

 唇を離して、恥ずかしそうに顔を赤くして俯いている彼女を覗きこんだ。

「これでは答えにならない?」

 すると俯いたまま、首を左右に振る。白い指先がさっきのキスを確かめるように彼女の赤い唇に触れている。

「もう一度いい?」

「ダメです!」

 ……どういうことだ? さっき受け入れてもらえたと思ったのは間違いだったのか?

 今度は俺が驚かされる番だ。

「あの……ダメじゃないんですけど……でもダメなんです」

「何言ってるんだ?」

 内心何を言われるのかドキドキしていたが、俺は彼女を落ち着かせた。

 落ち着かなければいけないのは俺も一緒だが。

「あの、今はダメです。風邪がうつるといけませんから」

 なんだそんなことか……。

 俺は自分が想像した悪い結果でなく喜ぶ。もちろん顔にはみせないけれど。

「俺なら別にかまわない。君――恵からの最初のプレゼントは風邪か。それも悪くない」

 俺の言葉に驚く彼女の唇を俺はもう一度奪った。

 返事なんて待ってられない。自分の中のこんな激しい感情がまだ残っていたことが自分でも驚いた。しかしそれが嬉しくもある。

 そしてそんな気持ちにさせてくれた彼女をすごく愛しくて大切に感じた。
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