これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「ほら、ここ。米粒ついてるぞ」

 指が伸びてきて、私の頬に触れた。そして私の頬から取ったご飯粒をそのまま口に運ぶ。なんだかその光景が気恥ずかしくて照れてしまう。

 本当に私どうしちゃったんだろう。

「そんな顔してると、こういうことしたくなるからやめて」

 さっきご飯がついていた場所と同じところに、彼の柔らかい唇がチュっと音をたてて触れた。

「“したくなる”じゃなくてもうしてるじゃないですか」

 恥ずかしさを誤魔化そうとして言い返す。

「ごめんごめん。次からは気を付ける」

 私を見ながら、目尻を下げた勇矢さんに心を乱されたのはいう間でもなかった。

 あんな顔するなんてズルイ。

 このときの私は急速に縮まっていくふたりの距離が嬉しくて、そして少し怖くもあった。

 自分を見失わないようにすればするほど、胸の高鳴りが私を苦しめた。

「恵、コーヒー飲む?」

 ふと話しかけられてはっと顔をあげる。

 彼の指さしているの方向をみると、そこには自販機があった。

「まだ時間があるし飲みます。一緒に選びに行きます」

 ふたりで自販機の前までくると、お金を入れて先に私にボタンを押すように言った。

 以前だったら、お金の話をして勇矢さんに呆れられていたポイントだが最近はスマートにおごられることを覚えた。これでも私にしたら進歩だと思う。
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