これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 私の言い訳はあまりうまくいかなかったみたいで、まだ疑われている。

「まぁ、彼はどんなに頑張っても無理よね。高嶺の花ね。常務の秘書って肩書きだけど実際は右腕だしね。超エリートだもの」

 はぁとまるで恋煩いでもしているかのようなため息をつきながら話をつづけた。

「報われない恋は、恋じゃないわ。するだけ無駄だからね……」

 胸に衝撃が走る。彼女の言葉ひとつひとつが胸に突き刺さるようだ。

 報われない恋は恋じゃない……。じゃあ私のこの気持ちは何だろう。いや、彼と思いが通じ合っているのだか十分報われているではないか。たとえそれが今だけだとしても。

……たとえふたりに続く未来が見えなくても。

「あっ、もうこんな時間だわ。ボーっとしてないであなたも行くわよ」

 背中をポンっとたたかれて我に返る。

 そして私は伊藤さんとともに会社へと戻った。心に受けた衝撃がまだ残ったままで。

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