これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 ……トクン。

 胸が大きく高鳴る。その音が私の体全体に響き渡った気がした。

 ストレートな彼の言葉に、私はすべてを預けようと思う。彼が欲しいと言ってくれている自分が、何だか急に大切なものになったような気がする。

「あの……どうぞ」

 本当はとっくに心は彼のものだ。私に小さな日常の幸せを教えてくれた人。

 次は自分の体を丸ごと愛して欲しいと、素直にそう思えた。

「……では遠慮なく」

 私の言い方がおかしかったのか、クスクスと笑いながら私のブラウスのボタンをひとつはずした。

 鎖骨と柔らかなふくらみの境目に、ゆっくりとキスをした。

「緊張しないで。さっきも言ったけど嫌がることはしないから。ゆっくりでいい。無理なら無理でいい。そのままの恵が欲しいんだ」

 そのままの私……。

 私はその言葉が嬉しくて、だけどせつなくて言いようのない気持ちになった。

 それを隠すように、ぎゅっと彼の背中に手を回す。精一杯の“YES”の意思表示だ。

 彼が私の体をまたぐようにして覆いかぶさってくる。

 苦しいなんてことはない。心地よい重量感が安心を与えてくれた。

 勇矢さんの手が優しく私の体を撫でる。形を確かめるような手の動きは強弱をつけて私を翻弄した。
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