これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 では……俺は……。

「高浜様には、恵が随分とお世話になったようで感謝しております」

 そういうことは、調査済ってことか。だからこそわざわざ今日ここで釘を刺しに来たのだ。

「しかし、恵は間もなくこちらに帰ってまいります。どうかあの子のためにも、しっかりと自分の道を歩けるように送り出してください」

「それは、彼女と別れろと……そうおっしゃってるんですよね?」

「話がわかる人で助かりました。しかし、あの子の性格を少しでもご存じのあなたなら想像できるでしょうが、きっと普通の別れではあの子は納得しないと思います」

 笑っているがその笑顔に冷酷さが滲んでいる。

「ですので、あの子が納得できるように。もとの世界に戻るのに未練のないようにしていただきたいのです」

 それは……俺のことをちゃんと忘れるようにしろということだ。

「ある程度傷つくのは仕方ありません。それは時間が解決してくれます。しかしあの子が未練を残しているようでは困るのです。この先何十年とその思いを抱えたままあの子は生きるでしょう。恵のことを思ってくださっているあなたなら、そんなこと望まないはずです」

 全部俺にゆだねるということか。そして目の前の男は、自分が望むように俺が行動することがわかっているようだ。
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