これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】

②本当の彼女

 彼女……恵と話をしなくなってから、半月ほどたった。

 受付や総務課のフロアで目にすることもあったが、徹底的に無視し続けた。もちろん電話やメールさえも。そのたびに、彼女の悲しそうな表情が目に入る。しかし俺は頑なに彼女を拒絶し続けた。

……それが、必ず彼女のためになると思って。

 その代わり俺は精力的に仕事をこなした……と言えば聞こえがいいのだろうが、実際は彼女のことを考える時間を少しでも減らしたかったというのが本音だ。

 俺の尋常じゃない働きぶりは、宗治が音をあげるほどだった。

「お前さぁ……もういい加減にしてくれよ」

 頭をガシガシとかきむしる宗治は、イライラとした様子を隠そうともしていない。

「何のことでしょうか?」

「はぁ? お前さぁ自分の恋愛がうまくいってないの、俺を巻き込むのやめてくれない?」

「何か勘違いされているようですが、私は忠実に業務をこなしているだけです。次はこちらの書類の決裁お願いします」

「っくっそーこのままじゃ俺の身が持たねーよ。ほらコレ」

 宗治が俺に向かって、封筒を一枚差し出した。

「なんですかこれは?」

 白い封筒には俺の名前が書いてある。だから俺宛てだということは理解できたが、どうして、宗治から手渡されることになったのだろうか? 宗治が俺に手紙を書くなんてことは絶対ありえないだろうし。
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