これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 記事を読むと、その写真が撮られたのはつい十日前ほどのことだった。

 記事には、でかでかと“スクープ 小関(おぜき)代議士、綾上家令嬢と結婚間近”と書かれていた。

 小関代議士とは、綾上大輝と人気を二分する若手の政治家だ。たしか小関も綾上と同様に過去に大臣経験者が親類にいたはずだ。

 政治色の濃いゴシップを取り扱うので有名なその雑誌だったが、あの計算高そうな恵の兄がこの記事をにぎり潰さなかったということは、この記事が出ることを望んでいたということだ。

 それは俺へのあてつけや、牽制の意味もあるのかもしれない。……いや、こんなところでうだうだとしている俺には、すでにそんな価値もないのかもしれないが。

「彼女……二宮さん、綾上の娘だったのか、どおりで植草社長のことも知ってたはずだな」

「そうですね」

 俺の感情のこもらない声色にイライラとした宗治が、畳みかける様に俺に言う。

「なにが“そうですね”だよ。お前これココちゃんと読んだのか?」

 そう言って指さすのは、“結婚間近”と書いてある見出しだった。

「彼女も、可愛い顔してやるもんだな。結婚前の火遊びにお前を使うなんてな。どうだお嬢様との恋愛ごっこ楽しかった――」

 ガタンっ!

 咄嗟に俺は、宗治の胸ぐらをつかんでいた。
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