これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 何も考えていなかった。ただ宗治の煩い口を黙らせることだけしか……。
 
 ぐいぐいと締め付けた。宗治は苦しそうな顔をしていたがそれでもなおまだ話し続ける。

「何、熱くなってるんだよ。お前だってわかってたんじゃないのか? だからこんなところで、ぼんやりしてるんだろう?」

 言っていることがいちいち真実で、それが俺の苛立ちを増幅させた。

「今時、家のための結婚ね~まぁ明日は我が身だけどな。あ、いいこと思いついた。別に綾上の家のためになるなら、相手は俺でもいいんじゃないのか? 俺でも十分メリット……」

 次の瞬間、俺は宗治の顔を思いきり殴っていた。

 長い付き合いのなかで、初めてのことだ。

「……っ痛って。何するんだ!」

 宗治が殴り掛かってきた。

 ガツンガツンと目の前で火花が散る。人の拳がめり込むようなはじめての感覚の後、痛みが走った。

 俺は、腕を振り上げて殴り返す。アイツの右頬にしっかりと入った。

「お前に俺の何がわかるんだ。適当に人と付き合うお前に、俺の何がっ!」

「お前のことなんて知らねーよ。だけどお前に俺のことをとやかく言う資格があるのか? 真剣に付き合っていた女が他の男と結婚するって言ってんのに、こんなところで指咥えて見てるお前に、とやかく言われたくねーよ」

 今度は拳ではなく言葉が俺をたたきつけた。

 お互いハァハァと肩で息をしている。
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