これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
彼女、二宮さんが葉山に派遣されてすでに二カ月が過ぎた。

彼女を初めて社内で見つけてから、たびたび彼女を見かけるようになった。

会議の準備で重い机を赤い顔で運ぶ姿。

総務課の担当である受付を笑顔でこなす姿。

給湯室で鼻歌交じりに湯呑を洗う姿。

これほど目にしているのに、彼女は全く俺に気が付いていないようだ。

梅雨入りが発表されたその週。

俺は宗治と取引先の社長を出迎えにエントランスへと降りていた。

車寄せに高級車が止まり、取引先の植草(うえくさ)土地開発の植草社長が車から降りてきた。

一緒にいるのは、きっと今回の案件の担当者だ。

車から降りたふたりに、宗治と俺は会釈をしてから先を先導する。

すれ違う社員も同じように、頭を下げていた。

その中に彼女の姿を見つけた。キレイな角度でされた会釈に品の良さを感じた。

目の端で彼女の存在を確認しながら、通り過ぎた。

そこから二・三歩進んでから声がかかる。
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