これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
***
京都へ戻ってきて、三週間。兄に告げらえたお見合いの日が迫っていた。
お相手は、小関代議士、父や兄とも親交が深く信頼のおける相手だと言っていた。
私は顔写真さえもみていないから、どんな人なのか知らないけれど。
「お嬢様はやっぱり赤がお似合いになりますね」
梅さんが嬉しそうに、私に赤い振袖を合わせている。懇意にしている呉服店から取り寄せた着物はどれも美しい。そういったことに詳しくない私でも、その美しさは理解できた。
「でも、こちらの薄い桜色も素敵ですし、このクリーム色もお嬢様の清楚さを引き立てます。で、お嬢様はどれがよろしいんですか?」
心ここにあらずの私を引き戻すように、尋ねられた。
「どれも素敵ね。だからどれでもいいわ。梅さんが選んで」
「……お嬢様」
梅さんのやるせなさそうな表情にハッとする。
ダメだってこれ以上心配かけちゃ。
最近では一向に元気にならない私に付き合って、梅さんまで表情が暗い。
「お嬢様、こちらにお座りください」
梅さんが畳の上に正座をして、その正面をバンバンと叩いた。私は言われた通り彼女の前に正座をした。
「お嬢様、梅には正直にお答えください。本当に御結婚されてよろしいのですか?」
真剣な顔で、私を睨んでいる。梅さんは私のことをいつも真剣に考えてくれている。
だから私も真剣に話をしなければならない。
「私は、このような結婚には反対でございます。私は小さなころからお坊ちゃんにもお嬢様にも、差し出がましいとは思いながらも姉とも母とも思えるような気持ちで接してまいりました」
梅さんが膝の上でぐっと拳を握り締めている。
京都へ戻ってきて、三週間。兄に告げらえたお見合いの日が迫っていた。
お相手は、小関代議士、父や兄とも親交が深く信頼のおける相手だと言っていた。
私は顔写真さえもみていないから、どんな人なのか知らないけれど。
「お嬢様はやっぱり赤がお似合いになりますね」
梅さんが嬉しそうに、私に赤い振袖を合わせている。懇意にしている呉服店から取り寄せた着物はどれも美しい。そういったことに詳しくない私でも、その美しさは理解できた。
「でも、こちらの薄い桜色も素敵ですし、このクリーム色もお嬢様の清楚さを引き立てます。で、お嬢様はどれがよろしいんですか?」
心ここにあらずの私を引き戻すように、尋ねられた。
「どれも素敵ね。だからどれでもいいわ。梅さんが選んで」
「……お嬢様」
梅さんのやるせなさそうな表情にハッとする。
ダメだってこれ以上心配かけちゃ。
最近では一向に元気にならない私に付き合って、梅さんまで表情が暗い。
「お嬢様、こちらにお座りください」
梅さんが畳の上に正座をして、その正面をバンバンと叩いた。私は言われた通り彼女の前に正座をした。
「お嬢様、梅には正直にお答えください。本当に御結婚されてよろしいのですか?」
真剣な顔で、私を睨んでいる。梅さんは私のことをいつも真剣に考えてくれている。
だから私も真剣に話をしなければならない。
「私は、このような結婚には反対でございます。私は小さなころからお坊ちゃんにもお嬢様にも、差し出がましいとは思いながらも姉とも母とも思えるような気持ちで接してまいりました」
梅さんが膝の上でぐっと拳を握り締めている。