これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「さようでございますか」
それ以上は何も言わずに私の話を聞いてくれている。
「そえでね、失恋もしたのよ。今まで綾上恵のままで過ごしていたら一生知らなかったことだと思う。でも不思議だよね“恋を失う”って書くのに全然私の中から無くなってくれないのよ。どんなに頑張ってもいなくなってくれないの。それどころか、私の心の全部が恋したままなの変でしょ?」
話をしていて、涙がこぼれた。そえでも笑顔を作ろうとする私を見て梅さんも嗚咽を漏らし始めた。
「……っ、でも私彼のことを傷つけてしまったから。彼とはもう終わってしまったから、だから、誰と結婚してもいいの。彼以外だったら、誰でも一緒だから」
だって、彼の横にたつことはもう許されないから。本当の私は彼のところに置いてきてしまったから。元の私が通るべきだった道を歩くことに決めたのだ。
「でも強いて言うなら、このままの私でもいいって言う人と結婚したいな。お見合い相手の小関さんはどうかな。こんな不誠実なお嫁さん嫌かな?」
ポロポロと涙がこぼれる。もうずっと泣き続けてるのに涙が枯れないのはどうしてだろうか。まだもっと泣いていいと神様が言っているんだろうか……。
ぐいっと、引っ張られて気が付けば梅さんに抱きしめられていた。
「もう結構です。それ以上は何もおっしゃらないでください。梅がおりますから、ずっとそばにおりますからね」
私はその日、母親に甘えるように梅さんにすがり付いて泣いた。
涙が枯れてしまえばいい。そうすればもう涙を流して周りの人に心配をかけることがなくなるんだから。