これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「あなたこそ、そんな薄汚れた手で私の恵に触れるなど、失礼だとは思わないのですか?」

「……私の、恵だと? ははっ、何か勘違いしているようだが、彼女は私の妻になる人ですよ」

 正人さんの言葉をうけて、勇矢さんが背後にいる私を見る。

 たしかに、私は正人さんとお見合いした。だから彼が言っていることは間違ってはいない。

 けれど勇矢さんの目の前で言ってほしくなかった。

 私は下を向いて、勇矢さんの視線から逃げた。

「あなたこそ、なにか勘違いされているようですね。彼女はあなたの妻になどなりませんよ」

 勇矢さんは私の手をギュッと掴んで、正人さんに反論する。

 その繋がれた手が大丈夫だと言ってくれているようで、胸がぎゅっとなる。

「本当に、君は一体なんなんだ。この私を誰だと思ってるんだ。侮辱するなら出るところに出ても一向にかまわないんだがね」

「本当ですか。それならばこちらの手間も省けます。自ら出るところに出て頂いて、罪を早々に御認めになられるとは、議員の鏡ですね」

 どういうことだろう。正人さんの罪?

 三人で押し問答をしていると、正人さんの背後に人影が見えた。

「お兄ちゃん……」

「綾上さん、助かりました。いきなり変な男やってき……て」

 勇矢さんは兄の方へ向くと、会釈をした。そして兄も同じように会釈を返す。
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