これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「いや~さすが葉山だね。あんな若い女子社員でも私のことを知っているとは」

「ありがとうございます」

宗治がそう答えながら、こちらを見たまま固まっている彼女をチラリと見た。

目ざといアイツが何も思わないわけがない。きっと俺と同じことを考えているはずだ。

植草都市開発は今年度四月からやっと取引を始めた会社だ。社長が我が社にくるのは初めてだ。

一般のしかも派遣社員が彼の名前、しかもフルネームを覚えていること自体がどうも腑に落ちない。

 何か引っかかるものがあるが、まずは目の前の商談だ。

 仕事が始まると、彼女への違和感はとたんにどこかへ行ってしまった。

 宗治とする仕事は楽しい。アイツが思い描くものが形になることに俺もやりがいを感じている。

 あの時、弁護士の道を選ばずにアイツの手をとってよかった。いくら試験に受かって資格を持っていたところで、俺が歩むべき道ではなかったんだ。
 

少々世話焼きの俺の特性をみて、秘書にスカウトするあたり宗治の先見の明は認めざるを得ない。

 そんなことを考えながら、今日もスマートに仕事をこなす宗治のアシストをこなしていた。
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