これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「私、勇矢さんと一緒に戻ります。今までみんなの言う通りにしてきてそれなりに幸せだし、感謝もしてる。でも……彼といると、今まで感じたことのない幸せを感じることができるの。それまでの人生が全部“偽物だって”思えるくらいに」

 その場にいる全員が、口をはさまずに私の話を真剣に聞いてくれていることがわかる。

「これからの私は、ちゃんと自分の足で歩いて行きます」

 しっかりと言い切った。これが私の気持ちだ。

 すると横に座っていた勇矢さんが私と同じように頭を下げた。

「よろしくお願いします。私に彼女とともに歩むチャンスをください」

「お願いします」

 勇矢さんの言葉にあわせて私も両親に許しを請う。

 部屋にどのくらいの沈黙が満ちた頃だろうか、意外にも最初に口を開いたのは兄だった。

「父さん、母さん。彼もここまで乗り込んでくるってことは、相当の覚悟をしてるんだと思うよ。俺だったら、正直ゴメンだ。それに彼は葉山の次期総裁の右腕だ。そこを鑑みても小関のバカ息子と結婚させるよりは何倍もマシだとは思うけどね」

 兄の言葉を受けて、それまで腕組みして目をつむって考えていた父が口をひらいた。

「わかった。ふたりの好きなようにすればいい。しかし恵は君の元に行っても、綾上の娘という肩書きはいつまでも付いて回る。それだけは十分に覚悟しておくように」

「それでは、認めていただけるのですね」

 父の言葉に、それまでこわばっていた表情を勇矢さんが緩めた。
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