これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 それから、私は勇矢さんの車に乗って自宅へと荷物を取りに帰った。

 久しぶりに乗る助手席から彼の顔をみると、本当に彼の元へと戻ってきたことが実感できた。

「本当に、今日俺とあっちに戻っていいのか?」

「はい!」

 元気に答えた私を、不安そうな顔で勇矢さんが見ている。

「正直、今日ご両親にお時間をいただいたことでさえ急なお話だったんだ。それが一緒に戻るなんて……」

「いいんです。きっと今日置いて行かれても明日には勇矢さんのところに戻っている自信があります」

「……どういう自信だよ」

 呆れたように呟くと「くくっ……」と肩を揺らせて笑い始めた。

 ひとしきり笑ったあと、車が赤信号で止まる。すると勇矢さんの大きな手が伸びてきた。

 ……きっと、また頭を撫でてくれるんだ。そう思っていたのに。

「ンっ……ん」

 首の後ろに手が回されたかと思うと、すぐに唇を奪われた。

 く、車の中で……こ、こんなこと。

 すぐに勇矢さんは何事もなかったかのように、今までと同じようにハンドルを握り車を走らせている。

 驚きで声を出すこともできず、口をパクパクさせる私を見てちょっと意地悪そうな顔を私に見せた。

 ……思い出した。勇矢さんは時々意地悪だってことを。

 でもこの意地悪が、結構好きだってことも同時に思い出す。私たちの日常もちゃんと戻ってきた、そんな気がした。
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