これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 自宅に着くと、連絡を受けていたのか梅さんが玄関で待っていてくれた。

「お嬢様……」

「梅さん!」

車から降りた私に駆け寄って来て、抱きしめてくれる。そして次に車から降りてきた勇矢さんの頭からつま先までを舐める様にして見ていた。

「はじめまして、高浜と申します」

 目の前の女性が先ほど話に出てきた梅さんだとわかったのか、勇矢さんは丁寧に自己紹介をしている。

 しかし、肝心の梅さんは勇矢さんを睨みつけていた。

「あなたが、私のお嬢様を泣かせた張本人ですねっ! 奥で私と“サシ”で話をしようじゃありませんか?」

「ちょ……梅さん……?」

 止める私のことなど気にせずに、ずんずんと詰め寄る梅さん。その気迫に押されて、勇矢さんは後ずさりしている。

「お嬢さまは、早くそのお着物をお脱ぎになってくださいまし。梅は忙しいので手伝いは他のものに申し付けてください」

「あの……でも」

「恵……いいから、行って」

 私に行くように促した勇矢さんの言葉も気に入らないのか「まぁ、恵だなんて呼び捨てですか?」と喰ってかかっている。

「恵、早く着替えてしまいなさい。でないと……彼がいつまでも梅さんにいじめ続けられることになると思うんだけど」

 先に屋敷についていた兄に言われて、私は急いで着替えを済ませた。
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