これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「そんなところに立っていないで、そろそろ中へ入ってきたらだどうだ? 恵」

 バレてたんだ……。

 ゆっくりと顔を覗かせると少しあきれた表情の勇矢さんがこちらを見ていた。

「ここにいるのわかってて、恵に聞かせるためにあんなこと言ったのか? 策士だな」

 兄が私の背後から勇矢さんをからかっている。

「どう取っていただいても結構です」

「あ~あ、恵……こんな男でいいのか?」

 兄の言葉に勇矢さんの、眉がピクリと動いた。

「お兄ちゃん!」

 どうやらふたりが仲良くなるには時間がかかりそうだ。

 そう思った矢先、勇矢さんが畳に拳をつき、兄に向かって頭を下げた。

「今回のことにつきまして、ご尽力いただきましたことお礼申し上げます」

「な、なんだよいきなり……!」

 あの、兄がたじろいでいる。滅多にない姿に私も梅さんも驚いた。

「今回、お兄様の手助けがなければこうやって今、恵と一緒にいられなかったと思います。前もって、ご両親を説得いただいたこと感謝いたします」

「まぁ、可愛い妹のためだからな。それにここら辺で小関の弱みを握っておくのも悪くないと思ったからな」

 照れ隠しなのか、視線を彷徨わせながら話をしている。

「……大事な妹さんとのことを認めてくださってありがとうございます」

 勇矢さんは、お兄ちゃんにまで頭を下げてくれた。それまでどこか真剣味のなかった兄の顔は真面目な表情になる。

「妹を……恵をよろしくお願いします」

「はい」

 顔をあげた勇矢さんが、まっすぐに兄を見る。そこに多くの言葉はなかったけれど、お互いの思いはちゃんと伝わったようだ。
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