これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「……んっ、ン……勇矢さぁ……ん」

「……ッつ」

 キスの合間に彼の名前を呼ぶ。するとそれまで私を支配していた唇が離れた。

 目を開けると、勇矢さんがスーツの袖口で唇を拭っている。

「悪い……全然、余裕ないから」

 そう告げると、立ち上がり私の膝裏に手を入れた。

「きゃ! こんな……私、歩けますから」

 急に抱きかかえられて、抵抗する。

「さっきも抱きかかえていたんだ。二度も三度も同じことだろ? それにさっき言ったよな……余裕ないって」

 私の顔を見ずに、まっすぐ前をみつめたままだったので勇矢さんの表情がわからない。

 そして彼が目指す場所は、寝室だ。

 部屋に入り、そっと私をベッドにおろすとフロアランプを点け、部屋のドアの鍵を後ろ手で閉めた。

「どうして、鍵なんて……私、逃げませんよ」

 近づいてくる彼に尋ねる。

「あぁ、恵を逃がさないためじゃない。猫が最近扉を開けられるようになったんだ」

「そうなんですね……」

 彼が私の隣へと来た。

「それに、恵を捕まえておくなら、こうする方がいい……」

 優しく倒されて、首筋に顔をうずめられた。

 重なった手の指と指が絡み合い、そして互いをギュッと握る。

「あっ……ずっと、捕まえておいてください」

 私の言葉に勇矢さんが、ビクッとなって顔をあげた。
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