これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
まだ子猫だろうか、泣いている声がミャーミャーとか弱い。その猫を一度芝生の上に戻すと、ビニール袋から猫缶を取り出した。
この野良猫の餌だったのか。
彼女が屈んで猫の前に猫缶を置いた。
「あっ! どうしよう……。オープナーがないっ!」
屈んでいた彼女が、困った顔で立ち上がったのが見えた。口元に手をあてて、本当に困った様子だ。
でも最近の缶詰ってプルタブみたいの、引っ張ったら開くよな?
気が付けば俺は、おせっかいにも彼女のそばに近づいていた。
「それ、オープナーなくても開きますよ」
背後から急に話しかけられた彼女は驚いたように、ビクッとなった。
その姿を見たときにちょっとおせっかいが過ぎたと後悔したものの、もう遅い。
「あ、もしかしてさっきのコンビニの?」
「あぁ、そうです。急に話かけてすみません。でもお困りのようだったので」
俺は話をしながら、置いてあった猫缶に手をのばすとリングに指をかけてゆっくりと蓋を手前に引き上げた。