これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】

“ぐー”

 物思いにふけっている俺を現実に引き戻したのは、隣にいる彼女のおなが鳴った音だった。

 彼女の方を見ると、真っ赤な顔をしてうつむいていたが、やがてその赤い顔のままこちらをうかがうようにして見てきた。

「聞こえましたよね?」

恥ずかしそうに聞かれた。俺はその顔がおかしくて思わず笑ってしまう。

「はい。聞こえてしまいました。もしよければおにぎり食べますか?」

俺はベンチを指さした。

「いいんですか!?」

ぱぁっと笑顔を浮かべたあと、申し訳なさそうな顔をして続けた

「あのでも、本当にいいんですか?私がもらっても」

「かまいませんよ。多めに買ったからどうぞ」

立ちあがった俺に次いで、彼女も立ち上がり俺の後をついてきた。

途中にあった水道でふたり手を洗う。

「あのこれ」

差し出された小さなタオルにも黒猫のモチーフがついていた。俺はありがたくそれを借りて手をふき、ベンチへと腰かけた。


 「いただきます」

うれしそうにおにぎりを受け取ると、ビニールを取ろうと悪戦苦闘していた。

「もしかして、やり方わかりませんか?貸してください」

 彼女の手からおにぎりを受け取ると、ビニールのひもを引っ張って海苔を巻いた状態にして渡す。
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