これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「はい。気を付けます」


「よろしい」
 
 満足そうにうなづくとまた視線を前に向けた。

 “私以外の”という単語が妙に心をくすぐる。そしてふわふわとした感情が体をかけめぐり足が地についていないような感覚になる。

 ひとつの単語がここまで私の気持ちをくすぐるなんて、言葉ってホントに不思議。

 そんな事を思っていると、ナビが自宅付近についたことを知らせてきた。

 あっという間……、もう少し遠くに住んでいればよかった。

 “目的地付近です”とカーナビが告げると、車がゆっくりと停車した。

「ナビってすごいんですね。ちゃんとうちのマンションまでたどり着きました」

 関心している私をよそに、高浜さんは怪訝な顔で車の窓からマンションをみていた。何も話さずにただじっと見ている様子が気になる。

「どうかしましたか?」

「こちらのマンションに、二宮さんのお部屋が?」

 何がそんなに引っかかるんだろう?私は質問の意図が理解できない。

「あの……何か変でしょうか?」

「いえ、ちょっと不思議だったのです。こちらのマンションは分譲だけを取り扱う不動産会社のものです。しかも価格もかなりハイクラスのものが多いはず。どうやってOLのあなたがこちらで暮らしているのか気になったもので……」

 心臓がドクンと大きな音を立てた。まさかそんな事聞かれるとは思っていなかったので、どうやって答えたらいいのか考えた。
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