これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 伊藤さんの様子から高浜さんの社内での人気を知ってしまった。
 
 それまでそういう話題が出なかったせいと、高浜さんとはほとんど社外で会っていたせいか全く気が付いていなかった。

 ……知りたくなかったな。

 本音は口に出さない。でも顔にその気持ちがでてしまう。

 さっきまで頬が緩んでいたのに、今はこわばっていた。

 コピー機から吐き出される紙を見つめながら、胸のざわつきが収まってくれるのをひたすら待ったのだった。

 私の派遣されている部署は、会社のどの部門ともかかわりがある。だからと言って高浜さんの姿をいつでも見られるわけではなかった。

 受付にいる間も、行き交う人の中に彼の姿を探してしまう。

 そして、それが意味することも私はわかっていた。

 デスクで仕事をしているときは、平気なのにひとりで作業をするときに思い出してしまう。

 現に今も給湯室で、来客用の茶器を片付けていると脳内に彼が浮かんでくる。

 彼と会いたいと思うことは、いけないことだろうか?

 会って、話をしたい。メタルフレームの奥で笑う彼の目をまた見たい。

 次に敬語を使わない彼に会えるのはいつ?

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