これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 その日は、残業もせずに派遣会社の勤怠シートに退社時間を書きこむと、すぐにロッカールームへと向かった。
 
急に誘われたけど、髪とお化粧ぐらいはどうにかしないと。

 髪を手早くハーフアップにしてすっきり見せた。消えかけた眉毛を書き足して、顔色が少しでもよく見える様にチークを入れる。

 口紅はあまり好きじゃないから、代わりにリップクリームを塗った。

 少しでも可愛いって思ってくれるかな……?

 誰かのために化粧をするときが、自分にくるなんて思ってもみなかった。

 そしてそれが、とても楽しいことを私は知ったのだった。

 少し早いかな?でも待たせるよりはマシ。

 そう思って、早めに会社を出る。ずいぶん日が長くなってきて、あたりはまだ薄暗い程度。

 挨拶をしながら会社のロビーから出ると、私は急ぎ足で公園へと向かう。

 時間は十分あるから、急がなくてもいい。けれど私のはやる気持ちに合わせて動く足のおかげで、予定よりも随分早く私は公園へ到着した。

 公園の大きな時計を確認すると、十八時四十分。

 しかし、公園に一歩入るとそこには先客がいた。
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