これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
高浜さんがオーダーしたワインが運ばれてきた。
フルーティーなワインは、すっきりとしていて飲みやすい。だけどさっき彼に忠告されたのでいつもよりも少し控えめに楽しんだ。
本当に酔ってしまって、変な事を口走ったら大変だ。
前菜からはじまり、サラダ、スープ、パン、魚料理……順番に出される料理を、少しの会話とおいしいワインで食べる。
会話は決して多くはない。そもそもふたりの共通の話題の大部分はクロが占める。
だけど、話をしていない時間も心地いい。目の前の高浜さんも同じように感じてくれていればいいのに。
「二宮さんは、大変綺麗に食事されますね。若い娘さんにしてはマナーも完璧です」
若い娘さんって……。
そのセリフだけを聞くと、ずいぶん“年寄り”の発言みたいで笑える。
うっかり笑いそうになったのを、高浜さんは見逃してくれない。
「何を笑っているんですか?」
年寄くさいなんて言えない……。
「なんでもありません。料理がおいしくて、話も楽しくて、嬉しくなっただけです」
私の答えを聞いた高浜さんが一瞬驚いた顔を見せた。
そのあと俯き加減になりながら眼鏡のブリッジを抑える。
気のせいかな……なんだか耳が赤い気がするけど。
「どうかしましたか? 空調がおかしいようであればお店の人に言いましょうか?」
すると若干むすっとした表情で返された。