これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
 それから数日。
 
俺は目の前の男にイライラとしていた。

 この男の女の後始末をすることは面倒ではあったが、それで仕事がうまく回るなら必要なことだ。

 それに基本的にはコイツのことは信頼も尊敬もしている。だからよほどのことがない限りこんな風にイライラすることはない。

 つい先ほど、取引先との昼食から戻った俺の上司、葉山宗治は受付に目線をやると、ニヤッと人の悪い笑顔を浮かべて歩み寄る。

 そしてその先にいたのは、二宮さんだ。

「みーっけ」

 なにが“みーっけ”だ。

 小学生みたいな口調の宗治にイライラが余計に募る。

 数歩後に控えてついて行くと、やはり宗治はわき目もふらずに二宮さんの元に歩いて行った。

 最初こそ会釈をしていた彼女だが、その相手が方向転換してきて近づいてきた。

 きょとんとした顔で、宗治をみつめている。

「え~と。二宮さんだよね」

「あ、はい。そうです。常務お疲れ様です」

綺麗な角度で会釈をする。彼女の耳にかけていた綺麗な髪がさらさらと落ちた。

「はい。お疲れですよ~おじさんたちとご飯食べても、全然美味くないんだよね」

「そうですか……おひるもお仕事なんて大変ですね」

笑顔で返す彼女にもなんだかイライラとする。

荒れた気持ちでふたりをみていると、電話がかかってきた。
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