これが恋というものかしら?~眼鏡課長と甘い恋~【完】
「常務失礼します」

 一声かけると、こっちを見ないまま手をヒラヒラと振る。

 まるで邪魔者みたいな扱いだ。

 エントランスの隅で電話をうけた。話をしながらもふたりの様子が気になり目が離せない。早く終わらせようとするほど、こういう時の電話は長引く。

 
 宗治の頭だけがみえて、彼女の表情が全く見えない。

 どんな話をしているのか気になる。今まで宗治が誰と何をしても興味などなかった。しいて言うならば、面倒なことにならなければいいと思う程度だ。

 しかし相手が彼女になった途端、こんなに心が乱れるとは思ってもいなかった。

 「常務……そろそろ」

 俺が声をかけるまで、宗治はずっと二宮さんと話をしていた。

 「じゃあ、また話しようね」

 笑顔の宗治に同じように彼女も笑顔を返した。

 上司に見せるただの笑顔だ。それなのに、自分にむけられたのではない笑顔をみていると胸がざわついた。

 俺はそんな気持ちを隠すように、彼女にも軽く会釈をしてから歩き始めた宗治の後に続いた。
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