只今、恋の修羅場に巻き込まれそうです!
数歩先で直人が立ち止まる。
俯いているから、はっきりとは分からないけど…
こっちを見ているような…そんな視線を感じた。
「直人なんて……大っ嫌い!!」
捨て台詞を吐くかのようにそう叫ぶと、私は廊下を駆け抜けていく。
駆け抜けて……いこうと、した。
まぁ完全に分かりきっていたんだけど…
鈍足な私がスポーツ万能のこいつに敵うはずもない。
あっさりと掴まれてしまった手。
さらには向かい合うように向きを変えられた。
その衝動で我慢していた涙が…ぽろり、と流れていく。
「美桜……お前、泣いて…」
「ない。…泣いて、ないもん」
いくら否定したって完璧に見られてる。
それでも認めたくなくて…
これ以上見られないように下を向いて、首をブンブン何回も振った。