只今、恋の修羅場に巻き込まれそうです!
「俺は…私は、自分が決めた相手と結ばれたいのです」
壇上に立った大和はスポットライトを浴びている。
光に照らされて初めて分かったけど…
廊下では黒っぽく見えていた衣装は萌葱色だったみたいだ。
会長と同じタイプの燕尾服。
でもエンブレムとかでゴールドが少し多めな気がする…
背の高いスラッとした大和に服装はよく似合っていて、本当に物語から出てきた登場人物って感じ。
そうそう。
ちなみに、今のは台詞を間違えた訳じゃないんだよー。
俗に言う『演出』ってものらしい。
私も最初は勘違いして、何回噛んでんだよ!って思ってたんだけどね?
練習が始まってからもずっと面倒そうにしていた大和。
行くのも億劫な様子で、しょっちゅう花音に引っ張られて行ってたのが懐かしい…
だけど……
今見えている横顔は、全くの別物で。
曇りなく前を見つめる眼差しはそんな面影を一切見せつけない。
はっきりとした口調。芯の通った声。
さっきの大和と、ふと重なって見える…
いつからだろう?
昔とは違う雰囲気を感じはじめたのは…
『子供』じゃない、かといって『少年』とも言い難い。
私の知らない男の人へと変わりつつある。
大和と、
それに…
直人も。