蒼の歩み
「大事にしたいと思う奴はとことん付き合う、か。……蒼君は、私のことは大事にしたいと思ってる?」



ああ、なんて自分勝手な質問をしているのだ私は。



「おめーは勿論、関わってくれてる奴等は俺にとっちゃ皆大事にしてェと思ってるぜ」



でも、この言葉を聞けて安心した。



「そっか。ところで、蒼君は、自分で自分の性格のことどう思ってる?」



「自分の性格、ねェ。そうだなァ、悪い、冷たい、だな」



え、意外。



「そう思ってるんだ自分で……。私以外の人と接してる蒼君をあまり知らないから何とも言えない部分もあるけど、私はどっちも思ったことないよ。蒼君は……、優しい性格だよ」



「そうだなぁ、優しすぎるとはよく言われるな。だが、それは優しさじゃなく俺のエゴなんだ。テメーじゃそう思っていても相手から見たら違う俺が映っている。テメーがどんな奴かなんざ、同じ行動をしていても相手によって変わるモンだし、わかんねェや」



わ、すごいその通り。思わず感嘆の息が漏れる。



「優しすぎる、か……。蒼君って、良くも悪くも人に手を差し延べるのかな」



「良くも悪くも、悪くもとはなんだよ、詳しく説明しろ」



信号で一時停止、彼は私の方に顔を向けてきた。いつもの、優しくもあり、どこか意地悪くもある顔。




「悪くもっていうのは差し伸べたことにより、言い方おかしいけど負担を負うというか、損をするというか。損得考えて差し伸べるわけじゃないってのはわかってるけど」



ちょっと真面目な話になったからか、蒼君の顔つきが変わった。ふむ、と考えたような表情をした後、信号が青になったので車を発進させながら彼はこう述べてきた。



「よく自分を犠牲にしてやら、負担だとか言うけどさ。犠牲と思うんならやるなって思うんだ。それってただの偽善者じゃねェのって。俺はテメーがそうしてェからしてるだけ。犠牲とも負担とも思っちゃいねえ。そいつに笑って欲しいだけだ。それはそれで関わっちまったら俺も放っておけねェ性分なんで押し付けっつーか、俺のエゴなんだろうがな」



「蒼君は、そんなに色んな人から信頼されてるの?」



まあ、蒼君に何でも話したくなる気持ちはわかるけれど。



「色んな話を聞かせて貰う事は多いな。その辺は信用して貰えてるみてェで」



「そう。……なんていうか、正論だから心地良いっていうのかな蒼君の言葉は」




早く私も、見習いたいものだ。
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