蒼の歩み
「どういう意味、なんだろね。あ、私のことお気に入りってことかな?」
期待に満ちた目で、わくわくしながら。
「おう、俺と関わってるやつはみんな俺のお気に入りなんで。残念ながらオメー含め」
「あ、ありがとう……」
他の方達と一くくりにされはしたが。お気に入り、というのが。むず痒くて、でも素直に嬉しかったからお礼の言葉を述べたのに。
「あーほ」
「ムッ……。なんでそうなるのよー!むぅぅ……。ま、お気に入りだとかそんなの関係ないか。蒼君が私をどう思っていようと、私は蒼君大好きだもんねー」
と、何故かドヤ顔で伝えてみる。
「そりゃどーも」
「あれ、なんか反応薄い……」
「真歩にしては珍しく、照れ隠ししねーのな」
「……積極的なほうがいいんでしょ蒼君は。だったらやっぱりストレートにぶつけてみようかと」
忘れないよ、蒼君の好みのタイプ。気が強くて、負けず嫌いで、正統派より型破り。……型破り、というのがどういうものなのかはわからないけれど。少しでも、ちょっとずつでもいいから彼の好みに近づきたいというものだ。
「……俺、積極的がいいとは言ってねーと思うんだけど」
あれ?
どうやら、勘違いのようだ……。
「ま、いつも話しかけてくれんのは嬉しいと思ってますよ。ありがとさん」
「突然のデレきたよコレ……!こ、こちらこそいつも構ってくれてありがとうございます!」
「え、これデレなのか」
「ありゃ、違うの。……ねぇ、ところでさ。やっぱり男の人って、しっかりした女性が好きなのかな?」
本当は、男の人というよりは蒼君の事だけを聞きたかったけれど。そこは濁した。
「どーした、真歩。恋患いか」
……絶賛貴方に片思い中。なんてね。
「そりゃ人其々だよな。しっかりモンが好きな奴も居れば、頼り無い奴が好きな奴も居る。そんな理想があるからといって、その通りの女を好きになるとは限らねェし、理想と違っても惚れちまう場合もある。女だってそうだろ」
「あ、確かに」
「好きな男でも出来たのか?」
「……そんなんじゃ、ないかな」
「ふーん?」
蒼君が、好き。男の人として、好き。
って、伝えれるのは。この気持ちに気づいてもらえるのは。まだまだ先の話みたいだね。